
私たちが毎日何気なく見ているSNSの動画の中に、近年急速に増えてきた“ある種類”のコンテンツがあります。
「不自然だけど目を引く」「なぜか最後まで見てしまう」——それが、AIスロップと呼ばれる動画群です。
これらは、AIが自動で生成した文章、ナレーション、映像を組み合わせたコンテンツであり、視聴者の関心を一瞬で奪うことに特化したつくりになっています。
SNS時代のアルゴリズムに最適化された“AIスロップ”は、便利さと引き換えに、クリエイティビティの本質を揺さぶる存在になりつつあります。
本記事では、こうしたAIコンテンツの拡大によって変化する「見る側」と「つくる側」の意識、そして私たちが今後どう向き合うべきかを掘り下げていきます。
また、Web制作やテクノロジーにおける最新の進化として、WASMと次世代Web体験に関する記事もあわせてご覧ください。
AIスロップ(AI Slop)とは、AIが生成したテキスト・音声・映像などを自動的に組み合わせて制作された、質より量を優先したSNS向けコンテンツの総称です。
特徴的なのは以下のような点です。
一見して“フェイク”とは気づきにくいこれらの動画は、短時間で再生回数を稼ぐ手段として多用されています。
以下は、AIスロップの代表的なコンテンツ例です。実際にSNSでも確認できます。
AIスロップがもたらす問題は、単に「つまらない動画が増えた」ということではありません。
他者の声や容姿の無断使用
「短くて見やすいもの」が「考えさせないもの」になり、SNSそのものの質が低下していく危機でもあります。
今のSNSでは、「どれだけ短時間で人の注意を引くか」が重要視され、内容より“つかみ”が優先されがちです。
この構造が、AIスロップのような“量産型低品質”コンテンツの増加を後押ししています。
AIの力で効率的にコンテンツを作ること自体は、悪いことではありません。
問題は、「質を上げる努力をせず、量だけで勝負する」ことにあります。
AIをうまく活用しながら、上記のような“人間の役割”を守れるかどうかが、今後の鍵になるでしょう。
AIが生成するコンテンツは、非常に洗練されてきました。しかし、そこには“作り手の思い”や“語り口のクセ”といった個性はほとんど感じられません。
私たちが目指すべきは、AIに頼らないことではなく、AIの補助を受けながらも、自分らしい視点や価値観を残すことです。
こうした要素が、AI時代のクリエイティブにおいて“個性”を定義し直すヒントになります。
「見られるために作る」のではなく、「伝えたいことがあるから作る」。
私たちは、そうした“熱”を持ったコンテンツこそが、これからの時代に求められると考えています。
視聴者としても、単なる“ながら見”ではなく、誰がなぜそれを作ったのかという目線を持つことが、健全な情報消費につながるはずです。
便利さやスピードが求められる時代だからこそ、人の手で生まれる「温度のある表現」の価値が見直される未来に期待したいと思います。
