
2026年10月、VPN、ファイアウォール、メールゲートウェイ、リモートサポートツールなど、社外とつながる「入口の機器」の脆弱性が、相次いで悪用されています。CISAのKEV(悪用が確認された脆弱性のカタログ)の10月23日19時30分(UTC)公開版には、追加日が10月1日から23日の脆弱性が26件あります(このデータの追加日を、私が数えた値です)。その中に、Ivanti、Citrix、Palo Alto Networks、Cisco、Fortinet、BeyondTrust、Arista、そして国内のSiteGuardが含まれています。
この記事は、経営者と情報システムの担当者向けに、どの機器が対象か、更新の前に何をすべきか、そしてなぜ「更新するだけ」では足りないのかを、各社の公式情報とCISAの発表を軸にして整理したものです。出典は、各記述のそばに示しています。情報は、日本時間2026年10月25日の時点のものです。
CISAのKEVの記述と、各社のアドバイザリにもとづく整理です。表の「追加日」は、KEVへの追加日です。修正版の番号は、各社のアドバイザリで、必ず確認してください。
| 製品 | CVE | KEV追加日 | 内容 | 条件・状況 |
|---|---|---|---|---|
| Citrix NetScaler ADC/Gateway | CVE-2026-88771、88772、88779 | 9月27日(88771、88772)、10月4日(88779) | 88771は、入力検証の不備で、未認証でコマンドを実行できる。88772は、メモリの範囲外の操作で、リモートコード実行またはサービス拒否。88779は、サービス拒否 | CISAは、世界中で悪用されているとしている。SAMLの構成では、88779で再起動を強制し、88771で注入したコードを実行させうる |
| Ivanti Connect Secure | CVE-2026-104935 | 10月13日 | 認証バイパスで、未認証でコマンドを実行できる | 影響は、22.8R2.4以前、25.1.2.2以前、25.1.1.1以前(BleepingComputerが、Ivantiの情報として報道)。修正版は、Ivantiのアドバイザリで確認 |
| Palo Alto Networks PAN-OS | CVE-2026-0322 | 10月14日 | 管理インターフェースのリモートコード実行。ファイアウォールのroot権限 | 攻撃者は、認証が必要で、管理インターフェースにネットワークで到達できることが条件。CVSS 4.0で8.6。公式は、「ごく限定的な悪用」を観測し、回避策はないとしている(Palo Alto Networks) |
| Cisco Secure Email Gateway | CVE-2026-76519 | 10月14日 | 未認証のリモートの攻撃者が、細工されたメールの添付ファイルで、OS上に任意のファイルを書き込める。CVSS 9.8 | File Reputationが有効で、Content Scanner Toolsが25.3.0.5525より前の場合。Ciscoは悪用を把握しており、回避策はない(Cisco)。修正は、15.5.5-014、16.5.0-780、またはContent Scanner Tools 25.3.0.5525以降 |
| Fortinet FortiMail | CVE-2026-104286 | 10月1日 | 未認証で、細工したHTTP/HTTPSリクエストにより、任意のファイルを書き込める | 影響は、8.0.0〜8.0.1、7.6.0〜7.6.6、7.4.0〜7.4.8、7.2.0〜7.2.9。修正は、8.0.2、7.6.7、7.4.9以降。7.2は7.4以降へ移行。回避策は、IBEサービスの無効化など。FortiMail Cloudは10月5日に修正済み(Fortinet) |
| Fortinet FortiOSなど | CVE-2025-61624 | 10月16日 | 管理者権限をもつ認証済みの攻撃者が、特定のCLIコマンドで、任意のファイルを書き込み・削除できる | Fortinetのアドバイザリを確認 |
| BeyondTrust Remote Support | CVE-2026-102764 | 10月16日 | 認証バイパス(なりすまし)で、アプライアンス上のファイルを操作できる。CVSS v4で9.3 | 影響は、26.2.3以前。修正は、BT26-05-RS。SaaS版は10月9日に修正済み。Rapid7によると、BeyondTrustは、8月29日に、2件の侵害があったとしている |
| Arista VeloCloud Orchestrator(オンプレ) | CVE-2026-114625 | 10月23日 | SQLインジェクションで、オーケストレーターのホストに影響が及ぶ | 影響は、5.2.xの5.2.3.18より前、6.1.xの6.1.3.10より前、6.4.xの6.4.2.12より前。Aristaは、悪用を把握している(Arista)。KEVの修正期限は、10月26日 |
| SiteGuard Server Edition(EGセキュアソリューションズ) | CVE-2026-106931 | 10月20日 | 統計機能のOSコマンドインジェクションで、rootまたはSYSTEM権限で任意のコマンドを実行できる。CVSS v4.0で8.5 | 影響は、Apache版・Nginx版・IIS版のVer8.00 Update5より前など。悪用が確認されている。公開は10月14日で、サポート契約のある顧客には、9月29日に個別に通知されていた(EGセキュアソリューションズ) |
Ivantiの件は、BleepingComputerの報道によると、Volexityが、UTA0576と呼ぶ攻撃者が、10月3日以降、この脆弱性を、ほかの2つの脆弱性と組み合わせて使っていたと報告しています(Defusedは、10月1日に最初の兆候を見たと述べています)。この攻撃者は、マルウェアもWebシェルも置かず、コマンドごとに機器を再度攻撃して、ログも改ざんしており、Ivantiの整合性チェックツール(ICT)で検知されなかった、とされています。組み合わせの1つ(権限昇格)は、報道の時点で、未修正でした。Ivantiの公式ページは取得できなかったため、この部分は、報道にもとづく情報です。
BeyondTrustも、Rapid7によると、公表(10月15日)より前の8月29日に、2件の侵害があったとしています。Mandiantは、この活動を、中国に関係すると疑われるスパイ活動の攻撃者に結びつけています。
国内でも、同じ種類の侵入が起きています。デジタル庁は、9月11日に、ガバメントソリューションサービス(GSS)への不正アクセスで、約24万6000人分の個人情報が漏えいした可能性があると、発表しました。
検知から公表までは、78日です(6月25日から9月11日まで。私の計算です)。デジタル庁は、脆弱性管理の方法の見直しと、外部接続の方法の改善を、再発防止策として挙げています。
また、警察庁の2026年上半期のまとめでは、ランサムウェアの被害報告は123件で、統計を取り始めた2020年以降、半期で最多です(@ITによる報道。警察庁の原文は、私は確認できていません)。
次の3点は、私見です。
CISAは、Citrixのアラートで、次の手順を示しています。更新の前に、侵害の兆候を確認し、侵害が疑われる場合は、更新の前に、フォレンジックの証拠を保全します。更新で、調査に必要な情報が減るおそれがあるためです。そのうえで、侵害の前のバックアップに戻し、保存された秘密情報(アカウントのパスワード、暗号化の鍵、SSL証明書)をすべて入れ替えます。ログは、機器の外のSIEMなどに転送します。機器の中のログは、すぐに上書きされるためです。
米国の連邦機関向けの指令BOD 26-04(2026年6月10日)も、フォレンジックトリアージの対象とされた項目では、3日以内に、対処と、侵害されていないかの確認を、あわせて行うよう求めています。この指令は、連邦機関が対象ですが、考え方は、民間にも役に立ちます。
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