October 25, 2026

VPN、メールゲートウェイ、リモート管理ツール――今月、悪用が確認された「入口の機器」と、いま確認す⁠る⁠こ⁠と

2026年10月、VPN、ファイアウォール、メールゲートウェイ、リモートサポートツールなど、社外とつながる「入口の機器」の脆弱性が、相次いで悪用されています。CISAのKEV(悪用が確認された脆弱性のカタログ)の10月23日19時30分(UTC)公開版には、追加日が10月1日から23日の脆弱性が26件あります(このデータの追加日を、私が数えた値です)。その中に、Ivanti、Citrix、Palo Alto Networks、Cisco、Fortinet、BeyondTrust、Arista、そして国内のSiteGuardが含まれてい⁠ま⁠す⁠。

この記事は、経営者と情報システムの担当者向けに、どの機器が対象か、更新の前に何をすべきか、そしてなぜ「更新するだけ」では足りないのかを、各社の公式情報とCISAの発表を軸にして整理したものです。出典は、各記述のそばに示しています。情報は、日本時間2026年10月25日の時点のもの⁠で⁠す⁠。

要点

  • 今月、悪用が確認された入口の機器は、少なくとも9製品あります(下の表)。いずれも、CISAのKEVに載ってい⁠ま⁠す⁠。
  • Ivanti、BeyondTrust、Citrixは、修正版の公開より前から悪用されていました。更新しても、更新の前に侵入されていた場合は、侵害が残り⁠ま⁠す⁠。
  • CISAは、更新の前に、侵害の有無を確認する指示(フォレンジックトリアージ)と、証拠の保全を求めています。更新で、証拠が消えるおそれがあるため⁠で⁠す⁠。
  • デジタル庁の事案(約24万6000件の情報が漏えいした可能性)も、VPN機器の脆弱性が侵入口で⁠し⁠た⁠。
  • いま最初にやることは、自社の入口の機器を一覧にして、悪用が確認された製品がないかを、確認すること⁠で⁠す⁠。

今月、悪用が確認された入口⁠の⁠機⁠器

CISAのKEVの記述と、各社のアドバイザリにもとづく整理です。表の「追加日」は、KEVへの追加日です。修正版の番号は、各社のアドバイザリで、必ず確認してくだ⁠さ⁠い⁠。

製品 CVE KEV追加日 内容 条件・状況
Citrix NetScaler ADC/Gateway CVE-2026-88771、88772、88779 9月27日(88771、88772)、10月4日(88779) 88771は、入力検証の不備で、未認証でコマンドを実行できる。88772は、メモリの範囲外の操作で、リモートコード実行またはサービス拒否。88779は、サービス拒否 CISAは、世界中で悪用されているとしている。SAMLの構成では、88779で再起動を強制し、88771で注入したコードを実行させうる
Ivanti Connect Secure CVE-2026-104935 10月13日 認証バイパスで、未認証でコマンドを実行できる 影響は、22.8R2.4以前、25.1.2.2以前、25.1.1.1以前(BleepingComputerが、Ivantiの情報として報道)。修正版は、Ivantiのアドバイザリで確認
Palo Alto Networks PAN-OS CVE-2026-0322 10月14日 管理インターフェースのリモートコード実行。ファイアウォールのroot権限 攻撃者は、認証が必要で、管理インターフェースにネットワークで到達できることが条件。CVSS 4.0で8.6。公式は、「ごく限定的な悪用」を観測し、回避策はないとしている(Palo Alto Networks)
Cisco Secure Email Gateway CVE-2026-76519 10月14日 未認証のリモートの攻撃者が、細工されたメールの添付ファイルで、OS上に任意のファイルを書き込める。CVSS 9.8 File Reputationが有効で、Content Scanner Toolsが25.3.0.5525より前の場合。Ciscoは悪用を把握しており、回避策はない(Cisco)。修正は、15.5.5-014、16.5.0-780、またはContent Scanner Tools 25.3.0.5525以降
Fortinet FortiMail CVE-2026-104286 10月1日 未認証で、細工したHTTP/HTTPSリクエストにより、任意のファイルを書き込める 影響は、8.0.0〜8.0.1、7.6.0〜7.6.6、7.4.0〜7.4.8、7.2.0〜7.2.9。修正は、8.0.2、7.6.7、7.4.9以降。7.2は7.4以降へ移行。回避策は、IBEサービスの無効化など。FortiMail Cloudは10月5日に修正済み(Fortinet)
Fortinet FortiOSなど CVE-2025-61624 10月16日 管理者権限をもつ認証済みの攻撃者が、特定のCLIコマンドで、任意のファイルを書き込み・削除できる Fortinetのアドバイザリを確認
BeyondTrust Remote Support CVE-2026-102764 10月16日 認証バイパス(なりすまし)で、アプライアンス上のファイルを操作できる。CVSS v4で9.3 影響は、26.2.3以前。修正は、BT26-05-RS。SaaS版は10月9日に修正済み。Rapid7によると、BeyondTrustは、8月29日に、2件の侵害があったとしている
Arista VeloCloud Orchestrator(オンプレ) CVE-2026-114625 10月23日 SQLインジェクションで、オーケストレーターのホストに影響が及ぶ 影響は、5.2.xの5.2.3.18より前、6.1.xの6.1.3.10より前、6.4.xの6.4.2.12より前。Aristaは、悪用を把握している(Arista)。KEVの修正期限は、10月26日
SiteGuard Server Edition(EGセキュアソリューションズ) CVE-2026-106931 10月20日 統計機能のOSコマンドインジェクションで、rootまたはSYSTEM権限で任意のコマンドを実行できる。CVSS v4.0で8.5 影響は、Apache版・Nginx版・IIS版のVer8.00 Update5より前など。悪用が確認されている。公開は10月14日で、サポート契約のある顧客には、9月29日に個別に通知されていた(EGセキュアソリューションズ)

Ivantiの件は、BleepingComputerの報道によると、Volexityが、UTA0576と呼ぶ攻撃者が、10月3日以降、この脆弱性を、ほかの2つの脆弱性と組み合わせて使っていたと報告しています(Defusedは、10月1日に最初の兆候を見たと述べています)。この攻撃者は、マルウェアもWebシェルも置かず、コマンドごとに機器を再度攻撃して、ログも改ざんしており、Ivantiの整合性チェックツール(ICT)で検知されなかった、とされています。組み合わせの1つ(権限昇格)は、報道の時点で、未修正でした。Ivantiの公式ページは取得できなかったため、この部分は、報道にもとづく情報⁠で⁠す⁠。

BeyondTrustも、Rapid7によると、公表(10月15日)より前の8月29日に、2件の侵害があったとしています。Mandiantは、この活動を、中国に関係すると疑われるスパイ活動の攻撃者に結びつけてい⁠ま⁠す⁠。

国内の実例:デジタル庁のガバメントソリューションサ⁠ー⁠ビ⁠ス

国内でも、同じ種類の侵入が起きています。デジタル庁は、9月11日に、ガバメントソリューションサービス(GSS)への不正アクセスで、約24万6000人分の個人情報が漏えいした可能性があると、発表しま⁠し⁠た⁠。

  • 6月25日:保守運用担当者のアカウントによる、サーバー上の大量のファイルへのアクセス⁠を⁠検⁠知
  • 7月9日:第三者が、VPN機器の脆弱性を使って侵入していたことが判明。同日、アカウントを停止し、侵害された機器と外部との通信⁠を⁠遮⁠断
  • 9月11日⁠:⁠公⁠表
  • 漏えいの可能性:約24万6000人分(政府機関の職員らが約18万9000人、関係する事業者や個人が約5万7000人)。氏名が約23万6000件、メールアドレスが約23万1000件、電話番号が約9万4000件、住所が約1000件(重複を含む)。マイナンバー、金融機関の口座情報、年金番号は、含まれて⁠い⁠な⁠い
  • 二次被害:確認されて⁠い⁠な⁠い

検知から公表までは、78日です(6月25日から9月11日まで。私の計算です)。デジタル庁は、脆弱性管理の方法の見直しと、外部接続の方法の改善を、再発防止策として挙げてい⁠ま⁠す⁠。

また、警察庁の2026年上半期のまとめでは、ランサムウェアの被害報告は123件で、統計を取り始めた2020年以降、半期で最多です(@ITによる報道。警察庁の原文は、私は確認できていませ⁠ん⁠)⁠。

なぜ「更新するだけ」では足りな⁠い⁠の⁠か

次の3点は、私見⁠で⁠す⁠。

  • 入口の機器は、インターネットに直接面していて、攻撃者が最初に見つけます。この10月の例では、Ivanti、BeyondTrustは、修正が出る前から悪用されていま⁠し⁠た⁠。
  • 入口の機器には、パソコンのような検知ソフトを入れにくく、機器の中のログも、少なく、早く上書きされます。侵入されても、気づきにくいの⁠で⁠す⁠。
  • 更新は、機器の中の脆弱性をふさぎますが、すでに置かれた侵入の足がかりは消しません。Rapid7も、更新しても、永続化は残る、と述べてい⁠ま⁠す⁠。

CISAは、Citrixのアラートで、次の手順を示しています。更新の前に、侵害の兆候を確認し、侵害が疑われる場合は、更新の前に、フォレンジックの証拠を保全します。更新で、調査に必要な情報が減るおそれがあるためです。そのうえで、侵害の前のバックアップに戻し、保存された秘密情報(アカウントのパスワード、暗号化の鍵、SSL証明書)をすべて入れ替えます。ログは、機器の外のSIEMなどに転送します。機器の中のログは、すぐに上書きされるため⁠で⁠す⁠。

米国の連邦機関向けの指令BOD 26-04(2026年6月10日)も、フォレンジックトリアージの対象とされた項目では、3日以内に、対処と、侵害されていないかの確認を、あわせて行うよう求めています。この指令は、連邦機関が対象ですが、考え方は、民間にも役に立ち⁠ま⁠す⁠。

いま確認す⁠る⁠こ⁠と

今日の⁠う⁠ち⁠に

  1. 入口の機器を、一覧にします。VPN、ファイアウォール、メールゲートウェイ、ロードバランサー、リモートサポートツール、SD-WANの管理機器、バックアップの管理画面など、インターネットから届くものです。CISAは、エッジデバイスを、ネットワークの境界にあり、インターネットからアクセスできる機器と定義しています(BOD 26-⁠0⁠2⁠)
  2. 一覧の機器ごとに、製品名とバージョンを書き、上の表の製品がないかを確認⁠し⁠ま⁠す
  3. 表の製品があれば、更新の前に、ログと診断情報を保全します。例えば、SiteGuardは、更新の前に、管理画面の「診断情報」をダウンロードして保管するよう案内しています。Aristaは、侵害が疑われる場合は、ログとファイルのタイムスタンプを保全するよう求めて⁠い⁠ま⁠す

今週の⁠う⁠ち⁠に

  1. 更新します。修正版の番号は、各社のアドバイザリで確認してく⁠だ⁠さ⁠い
  2. 更新のあとに、侵害の確認をします。CISAは、NetScaler Consoleで提供されるIOCを実行して、侵害の兆候を確認する方法を、案内しています。Ivantiの整合性チェックツールは、上の報道のとおり、回避された例があるため、これだけに頼らず、ほかの確認とあわせてく⁠だ⁠さ⁠い
  3. 管理画面を、インターネットに公開していないか確認します。Palo Altoは、管理アクセスを、信頼できる内部のアドレスや、1台の踏み台に限ると、リスクが下がるとして⁠い⁠ま⁠す
  4. 入口の機器のログを、機器の外に転送⁠し⁠ま⁠す

今月の⁠う⁠ち⁠に

  1. 保守用のアカウントの権限と、監視を見直します。デジタル庁の事案は、保守運用担当者のアカウントによる、大量のファイルアクセスが、検知のきっかけ⁠で⁠し⁠た
  2. ベンダーからの通知を受け取る窓口を、最新にします。SiteGuardは、サポート契約のある顧客には、公表の約2週間前の9月29日に、個別に通知していました。契約や保守の窓口の連絡先が古いと、この通知が届き⁠ま⁠せ⁠ん
  3. 機器の更新を、誰が、どの頻度で行うかを決めます。サポートが終わった機器は、入れ替⁠え⁠ま⁠す

未確⁠認⁠の⁠点

  • IvantiとBeyondTrustの公式のアドバイザリは、取得できませんでした。この2製品の細かい情報は、報道とRapid7の分析にもとづ⁠き⁠ま⁠す
  • Citrixの修正版の番号は、取得できなかったため、記載してい⁠ま⁠せ⁠ん
  • 警察庁の原文は、確認できていません。件数は、報道にもとづ⁠き⁠ま⁠す

関⁠連⁠記⁠事

入口の機器の棚卸し、更新、侵害の点検でお困りの方は、下記よりお問い合わせくだ⁠さ⁠い⁠。

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