October 30, 2026

Jenkins本体の脆弱性15件――認証なしは1件、でも「読み取り権限」だけで届くもの⁠が⁠あ⁠る

Jenkinsプロジェクトは、2026年10月28日に、Jenkins本体(core)の脆弱性15件を修正するセキュリティアドバイザリを公表しました。深刻度は、15件のうち13件が「高」、2件が「中」です。影響を受けるのは、週次版(weekly)が2.587以前、LTS版が2.580.1以前で、修正版は、週次版の2.588と、LTS版の2.580.2です(Jenkin⁠s⁠)⁠。

自社でJenkinsを運用している会社は、この記事を、確認の手がかりにしてください。公式のアドバイザリを軸に、確認できた事実と、確認できていない点を分けて整理しています。情報は、2026年10月30日の時点のもの⁠で⁠す⁠。

同じ週に、CI/CD基盤では、GitLabにも、深刻度10.0の欠陥が2件出ています。GitLabの記事も、あわせてご覧くだ⁠さ⁠い⁠。

日本語で出回っている情報には、原文と異なる訳や要約が、かなり見受けられます。この記事は、一次情報を私たちも原文で確認して書いていますが、読者の皆さんも、各社の原文でのご確認をお勧めします。出典は、各記述のそばに示してい⁠ま⁠す⁠。

要点

  • 15件のうち、認証なしで悪用できるのは、1件です(SECURITY-4122)。ほかの14件は、何らかの権限を持つアカウントが前提です(Jenkin⁠s⁠)⁠。
  • ただし、前提の権限は、低いものが多くあります。「Overall/Read」(Jenkinsを読み取る権限)だけで届くものが、複数あり⁠ま⁠す⁠。
  • リモートコード実行や、それにつながりうるものが、5件あります。XStream(設定ファイルの読み書きに使う部品)の逆シリアル化の不備、エージェントの起動コマンドの承認の回避、シンボリックリンクの追従、エージェント名のパストラバーサル、成果物の展開の競合⁠で⁠す⁠。
  • 悪用の報告は、アドバイザリには書かれていません。CISAの「悪用が確認された脆弱性(KEV)」にも、10月29日のデータの時点で、登録がありません(CISAのKEVのデータを、私が直接確⁠認⁠)⁠。
  • 回避策は、ありません。更新が、唯一の対処⁠で⁠す⁠。
  • 報告者として、「Anthropic OSS program」が、15件のうち13件に、名前を挙げられてい⁠ま⁠す⁠。

何が起⁠き⁠た⁠か

日付(2026年) 出来事 出典
9月30日 LTS 2.580.1が公開される(セキュリティの記載なし) Jenkins
10月28日 アドバイザリが公表される。週次版2.588と、LTS 2.580.2が、修正版 Jenkins、Jenkins

対象は、Jenkins本体のみです。プラグインの脆弱性は、このアドバイザリには含まれていません(Jenkin⁠s⁠)⁠。

15件⁠の⁠一⁠覧

深刻度は、Jenkinsの評価です。アドバイザリには、重大度とCVSS 3.1のベクターはありますが、数値のスコアは、書かれていません(Jenkin⁠s⁠)⁠。

番号(CVE) 内容 必要な権限 深刻度
SECURITY-4122(CVE-2026-117618) セットアップウィザードの競合で、管理者アカウントを作られる 不要(認証なし。攻撃の複雑さは「高」) 高
SECURITY-4125(CVE-2026-117612) XStreamの逆シリアル化で、任意の型を作られ、リモートコード実行の可能性 Overall/Readと、匿名ではないアカウント。またはconfig.xmlをPOSTできる権限(Item/Configureなど) 高
SECURITY-4123(CVE-2026-117614) エージェントの起動コマンドが、管理者の承認なしに変換され、コントローラのJVMで、任意のコードを実行できる Agent/Configure 高
SECURITY-4187(CVE-2026-117615) 項目の名前の変更で、シンボリックリンクの指す先がコピーされ、任意のファイルを読める。リモートコード実行につながる可能性 Item/Create、Item/Configure 高
SECURITY-4188(CVE-2026-117616) エージェント名のパストラバーサルで、エージェントの設定を上書きできる。リモートコード実行につながる可能性 Overall/Read 高
SECURITY-4248(CVE-2026-117617) 成果物の展開の競合で、任意の場所にファイルを作れる。リモートコード実行につながる可能性 Item/Configure 高
SECURITY-4225(CVE-2026-117613) コレクションの要素の型の検査の回避で、保存型のXSS Item/Configure 高
SECURITY-4232(CVE-2026-117621) ワークスペースのブラウザで、XSS エージェントのプロセスを制御できること 高
SECURITY-4249(CVE-2026-117622) エージェントのエラー処理で、XSS 侵害されたエージェント 高
SECURITY-4229(CVE-2026-117623) パンくずのメニューで、保存型のXSS Overall/Read 高
SECURITY-4189(CVE-2026-117619) APIトークンで得た「remember me」のクッキーが、トークンの失効後も有効 有効なAPIトークン(CVSSの権限は「低」) 高
SECURITY-4226(CVE-2026-117620) 古いデータの監視機能への注入で、管理者の操作をきっかけに、アカウントを乗っ取れる Overall/Read(管理者の操作が必要) 高
SECURITY-4243(CVE-2026-117624) XStreamの逆シリアル化の、ルート要素の制限を回避。現時点で確認された影響は、ユーザーの記録(名前と表示名のみ)の作成 CVSSの権限は「低」 高
SECURITY-4206(CVE-2026-117625) 権限チェックの不足で、HTTPプロキシの設定(サーバー、ポート、ユーザー名、除外ホスト)を読める Overall/Read 中
SECURITY-4237(CVE-2026-117626) ファイルブラウザのパストラバーサルで、$JENKINS_HOMEのファイルの名前、大きさ、更新日時を見られる Overall/Read 中

出典は、すべてJenkinsのアドバイザリ⁠で⁠す⁠。

「認証なしは1件」は、どこまで⁠安⁠心⁠か

認証なしで悪用できるのは、SECURITY-4122だけです。ユーザーを作る入口が、セットアップウィザードの完了を確認していないため、最初の管理者アカウントを置き換えている最中に、攻撃者が、管理者アカウントを作れます。攻撃の複雑さは「高」と評価されています(Jenkins)。初期設定の途中の、限られた時間に関する欠陥⁠で⁠す⁠。

ほかの14件は、何らかの権限が前提です。ただし、次の点に注意してくだ⁠さ⁠い⁠。

  • 「Overall/Read」だけで届く欠陥が、複数あります(SECURITY-4188、4229、4226、4206、4237)。このうち、SECURITY-4188は、エージェントの設定を上書きでき、リモートコード実行につながる可能性があ⁠り⁠ま⁠す
  • 「Overall/Read」を、匿名の利用者にも許している設定では、このハードルは、さらに下がる可能性があります。これは私の見立てで、アドバイザリには、書かれてい⁠ま⁠せ⁠ん
  • 「Item/Configure」や「Agent/Configure」は、開発者や、運用の担当者が持つことの多い権限です。乗っ取られたアカウントや、社内の人の悪意でも、届⁠き⁠ま⁠す

CI/CDの基盤は、ソースコード、ビルドの秘密情報、本番へのデプロイの権限が集まる場所です。「認証なしは1件」という点は、事実ですが、それだけで、更新を後回しにする理由にはなりま⁠せ⁠ん⁠。

コード実行につながりう⁠る⁠欠⁠陥

次の5件は、アドバイザリが、任意のコードの実行、またはその可能性を、明記しています(Jenkin⁠s⁠)⁠。

  1. SECURITY-4125:XStreamの逆シリアル化で、任意の型を作られる(リモートコード実行の可⁠能⁠性⁠)
  2. SECURITY-4123:エージェントの起動コマンドの承認の回避で、コントローラのJVMで、任意のコードを実行(Agent/Configureが⁠必⁠要⁠)
  3. SECURITY-4187:シンボリックリンクで、任意のファイルを読める(リモートコード実行につながる可⁠能⁠性⁠)
  4. SECURITY-4188:エージェントの設定を上書きできる(リモートコード実行につながる可⁠能⁠性⁠)
  5. SECURITY-4248:成果物の展開の競合で、任意の場所にファイルを作れる(リモートコード実行につながる可能性。並列のビルドで起き⁠う⁠る⁠)

XStreamは、Jenkinsが、config.xmlなどの設定を、読み書きするために使う部品です。SECURITY-4125と4225と4243は、その扱いの不備です。修正は、型の許可の仕組みを足すもので、更新後に、一部のプラグインなどが、動かなくなる場合に備えて、その仕組みを切る設定も用意されています(後の「更新するときの注意」を参⁠照⁠)⁠。

悪用は、どこまで⁠確⁠か⁠か

項目 内容 確度
Jenkinsのアドバイザリ 悪用が確認された、という記載はない。XSSの一部は、CSPで緩和される(2.539以降、LTS 2.541.1以降)と書かれている 一次(Jenkins)
CISAのKEV 10月29日のデータの時点で、15件のCVEの登録は、なし 一次(CISAのKEVのデータ)
攻撃コードの公開 私は、確認できていません 未確認

「悪用が確認されていない」ことは、安全という意味ではありません。アドバイザリが公開されると、修正の差分から、攻撃を組み立てられるようになる、というのが、一般的な見方です。今回の件について、示されたものではありま⁠せ⁠ん⁠。

報告者に、Anthropic OSS programが並ん⁠で⁠い⁠る

アドバイザリの謝辞では、「Anthropic OSS program」が、15件のうち13件に、名前を挙げられています(単独のものと、他の研究者との連名があります。Jenkins)。残りの2件(SECURITY-4248、4249)は、Samy Medjahed氏⁠で⁠す⁠。

Anthropicは、自社の協調的な脆弱性開示の一覧で、Claudeのモデル(Claude Mythos Previewの初期のスナップショットを含む)を使って、オープンソースの脆弱性を探していると説明しています。一覧には、10月2日の時点で、2万9439件の候補が見つかり、5674件が有効と確認され、6157件が、591のオープンソースのプロジェクトに開示された、とあります。この一覧に、Jenkinsは、出てきません(Anthropi⁠c⁠)⁠。

つまり、「Anthropic OSS program」が報告者であることと、Claudeがこれらの欠陥を見つけたことは、どちらも、Jenkinsの側からも、Anthropicの側からも、明記されていません。ただ、AIを使った脆弱性探索の仕組みが、実際のオープンソースの、大量の修正につながっていることは、確かです。同じ週の、Anthropicによる別の実証は、Linuxカーネルの記事に書きま⁠し⁠た⁠。

いま、や⁠る⁠こ⁠と

1. 自社のJenkinsの版を確⁠認⁠す⁠る

Jenkinsの画面の右下に、版が表示されます。次の版以降に、更新し⁠ま⁠す⁠。

種類 修正版
週次版(weekly) 2.588
LTS版 2.580.2

アドバイザリが挙げる修正版は、この2つだけです。それより古いLTSの系統を使っている場合は、2.580.2(またはそれ以降)まで、上げる必要があります(Jenkin⁠s⁠)⁠。

2. 更新するとき⁠の⁠注⁠意

更新後に、一部の動作が変わる場合に備えて、アドバイザリは、確認用のJavaのシステムプロパティを示しています。恒久的な対処では、ありません(Jenkin⁠s⁠)⁠。

  • SECURITY-4125:hudson.util.XStream2.SUPPRESS_TYPE_PERMISSION=trueは、新しい型の許可の仕組みを、無効に⁠し⁠ま⁠す
  • SECURITY-4225:hudson.util.RobustReflectionConverter.skipFieldValueElementTypeCheck=trueは、要素の型の検査を、無効に⁠し⁠ま⁠す

どちらも、修正で入った保護を、切るものです。動作の確認のためだけに使い、原因のプラグインを直したら、外してくだ⁠さ⁠い⁠。

3. 権限を⁠見⁠直⁠す

次の点を、確認してください(権限の見直しは、私の提案です。アドバイザリが、示したものではありませ⁠ん⁠)⁠。

  • 匿名の利用者に、「Overall/Read」を許してい⁠な⁠い⁠か
  • 「Item/Configure」「Agent/Configure」「Item/Create」を持つ人が、必要な人⁠だ⁠け⁠か
  • Jenkinsが、インターネットから見えていないか。社内や、VPNの内側に限れるなら⁠、⁠限⁠る

4. 侵害⁠の⁠確⁠認

悪用の報告は、確認できていませんが、更新と並行して、次の点を見ておくと安全です(これも、私の提案で⁠す⁠)⁠。

  • 見覚えのない管理者アカウントや、ユーザーがないか(SECURITY-4122、4243に⁠対⁠応⁠)
  • ジョブやエージェントの設定(config.xml)に、身に覚えのない変更がないか(SECURITY-4125、4188に⁠対⁠応⁠)
  • ビルドの実行履歴に、身に覚えのないジョブや、不審なコマンドが⁠な⁠い⁠か
  • 更新後に、APIトークンの見直しをする。SECURITY-4189は、トークンを失効させたあとも、「remember me」のクッキーが、有効なままになる欠陥⁠で⁠し⁠た

やってはいけな⁠い⁠こ⁠と

  • 「認証なしは1件だけ」で、更新を後回しにしない。権限は、低いもので届くものがあ⁠り⁠ま⁠す
  • 動作の確認用のプロパティを、そのまま、残さない。修正で入った保護を、切ったままにな⁠り⁠ま⁠す
  • Jenkinsを、インターネットに公開したまま、更新を待⁠た⁠な⁠い
  • ネットで見つけた攻撃コードを、本番で試⁠さ⁠な⁠い

未確⁠認⁠の⁠点

  • 悪用の報告は、確認できていません。攻撃コードが公開されているかも、確認できてい⁠ま⁠せ⁠ん
  • Claudeが、これらの欠陥を、実際に見つけたかは、確認できていません。アドバイザリが書いているのは、「Anthropic OSS program」という名前ま⁠で⁠で⁠す
  • アドバイザリには、数値のCVSSスコアが、ありません。記事の深刻度は、Jenkinsの評価(高、中⁠)⁠で⁠す
  • SECURITY-4243のCVSSのベクターは、スコープが「変更あり」、機密性と可用性が「なし」と書かれていて、他の項目と、形が違います。確認された影響は、ユーザーの記録の作成に限られている、とされて⁠い⁠ま⁠す
  • 更新で、プラグインとの互換性に、どれだけ影響が出るかは、私は確認してい⁠ま⁠せ⁠ん
  • 古いLTSの系統に、修正の移植(バックポート)があるかは、アドバイザリには、書かれてい⁠ま⁠せ⁠ん

関⁠連⁠記⁠事

自社のJenkinsの版の確認や、権限の見直し、更新、侵害の確認でお困りの方は、お問い合わせくだ⁠さ⁠い⁠。

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