
LinuxカーネルのIPv4のTCP処理にある欠陥(CVE-2026-98432)について、10月30日の記事から、状況が動きました。Red Hatは、修正版を出しました。Ubuntuは、修正版を、試験用の場所に置きました。そして、10月30日の記事に書いた対処の一つは、書き直す必要があります。
この記事は、変わった点と、いま確認することを、各社の原文で整理したものです。情報は、2026年11月6日の時点のものです。各社のページは、それぞれ更新の日付が違うため、記述のそばに日付を添えました。
日本語で出回っている情報には、原文と異なる訳や要約が、かなり見受けられます。この記事は、一次情報を私たちも原文で確認して書いていますが、読者の皆さんも、各社の原文でのご確認をお勧めします。
| 項目 | 10月30日の記事 | いま | 出典 |
|---|---|---|---|
| Red Hat | RHELの修正状況は、確認できていませんでした | RHEL 8、9、10の修正版が、11月1日に公開されています | RHSA-2026:93412 |
| Red Hatの深刻度 | 8.1(Red Hatのページには、5.9の表記もありました) | 9.8(Critical)に、なっています | Red Hat |
| Ubuntu | 全リリースで、作業中 | 22.04、24.04、26.04は、試験用の場所に修正版があります。26.10は、修正済みです | Ubuntu |
| MPTCPを止める | つなぎの対処として、書きました | 足りません。Red Hatは「完全な緩和策ではない」としています | Red Hat |
| KEV(悪用が確認された脆弱性) | 10月29日のデータで、登録なし | 11月4日の版でも、登録なし | CISAのKEVのデータ(直接確認) |
| 探りの観測 | 報告なし | 研究者が、11月2日からの、疑わしい探りを投稿(推測つき。裏付けは、見つからず) | X |
10月30日の記事の、MPTCPを止める対処と、Red Hatの記述は、この記事の内容に合わせて、更新しました。
Red Hatは、11月1日に、RHELの3つの版の修正版を、公開しました。
| RHEL | 勧告 | 修正されたカーネル | 勧告の深刻度 |
|---|---|---|---|
| 8 | RHSA-2026:93414 | kernel-4.18.0-553.182.1.el8_10 | Critical |
| 9 | RHSA-2026:93412 | kernel-5.14.0-687.64.1.el9_8 | Important |
| 10 | RHSA-2026:93413 | kernel-6.12.0-211.72.1.el10_2 | Important |
3つとも、CVE-2026-98432の修正を含みます。RHEL 9の勧告には、複数の延長サポートの系統(EUSなど)も含まれます。自分のマイナーバージョンの修正が、どの番号になるかは、勧告の表で確認してください(私は、RHEL 9の勧告の、前半しか読めていません)。
深刻度は、勧告の間で、そろっていません(RHEL 8がCritical、9と10がImportant)。理由は、確認できていません。
気をつけたいのは、Red Hatの別のページです。セキュリティ速報(RHSB-2026-016)は、11月4日に更新されていますが、本文は「修正版の公開を急いでいる」のままで、勧告の番号が書かれていません(Red Hat)。勧告は、11月1日の日付で、実在します。この食い違いの理由は、確認できていません。修正が出ているかは、速報ではなく、個別の勧告で確認してください。
速報には、次のことも書かれています(Red Hat)。
Canonicalは、11月2日に、修正版を、試験用の場所(-proposed)に置いた、と書いています(Ubuntu)。
| リリース | 状況 | カーネル |
|---|---|---|
| 26.10 | 修正済み | 7.3.0-10.10 |
| 26.04 LTS | -proposedにある | 7.0.0-43.43 |
| 24.04 LTS | -proposedにある | 6.8.0-149.149 |
| 22.04 LTS | -proposedにある | 5.15.0-203.213 |
| 20.04、18.04、16.04 | 修正待ち | なし |
| 14.04 | 影響なし | なし |
-proposedにあるものは、通常の更新では、入りません。明示的に指定して、入れる必要があります。通常の更新に移る時期は、示されていません。2,000台を超える認定済みの機器での、確認が終わってからとされています(Ubuntu)。Ubuntuの追跡ページでも、クラウド、FIPS、リアルタイムなどの派生カーネルは、作業中の扱いです(Ubuntu、11月5日の更新)。
なお、10月30日の記事の時点では、Ubuntuは、全リリースが「脆弱で、作業中」でした。そこからは、前に進んでいます。
10月30日の記事の「更新できないときの、つなぎの対処」に、私は「MPTCPを止める」を、一番に書きました。実証の前提がなくなる、という理由です。これは、弱すぎる対処でした。
Akamaiは、もう一つの経路も挙げています。リクエストソケットの移行が有効な場合にも、似た経路があります。有効にする設定は、次のどちらかです(Akamai)。
net.ipv4.tcp_migrate_req=1
もう一つは、BPFプログラムによる指定です。Akamaiは、独自に攻撃を試したのではなく、Anthropicの説明に基づいています。
MPTCPを止める手順は、無駄ではありません。実証の前提を消す効果は、あります。ただし、それだけで「対応済み」にはしないでください。
Red Hatは、修正版を入れるまでの対処として、IPv4のオプション付きのTCPの通信を、受信の段階で落とす設定を公開しました。次の内容です(Red Hatの、原文のとおり)。
table inet cve_2026_98432 {
chain input {
type filter hook input priority -310; policy accept;
ip protocol tcp ip hdrlength > 5 counter drop
}
}
上の設定を、ファイルに保存して、文法を確認してから、適用します。外すのは、修正版を入れたあとです。
# 文法の確認(ファイル名は、Red Hatの例のとおり)
sudo nft --check --file cve-2026-98432.nft
# 適用
sudo nft --file cve-2026-98432.nft
# 修正版を入れたあとに、外す
sudo nft delete table inet cve_2026_98432
Red Hat自身が、次の点を書いています(Red Hat)。
ほかに、私が読んだ範囲では、次の注意が、別の資料にあります。転送する通信が対象になる点と、IPオプションが通常の通信になる、CIPSO(SELinuxなどのラベル付きネットワーク)の環境で使えない点です。これらは、Red Hatの速報には、書かれていません(RFF。個人のブログで、公式の案内ではありません)。
Ubuntuのセキュリティチームの、この件の記事には、この設定の記述が、ありません。UbuntuのCVEのページには、コミュニティから寄せられた、同様の対処が載っています。ただし、公式の修正ではない、と注記されています(Ubuntu)。
RHEL、AlmaLinux、Rocky Linux、Oracle Linuxなどです。
sudo dnf update kernelのあと、再起動しますuname -rで、再起動後のカーネルが、上の表の版以上であることを確認します(自分のマイナーバージョンの番号は、勧告で確認します)uname -rを確認します。ライブパッチを使っている場合は、その適用を確認しますセキュリティ研究者のMarcus Hutchins氏が、11月3日に、Xで、次の観測を投稿しました(X)。
この投稿は、攻撃が成功した、という報告ではありません。探りの観測と、氏の推測です。生のログや、侵害の痕跡の情報(IOC)は、投稿に添えられていません。ほかの観測組織による裏付けも、私が探した範囲では、見つかっていません。
一方で、ほかの発表は、まだ、攻撃の報告をしていません。Akamaiは、「公開された、動く攻撃コードは、把握していない」としています(Akamai)。CISAのKEVにも、登録はありません(2026年11月4日の版を、直接確認)。
読み方としては、こうです。探りの観測は、一人の研究者の、推測つきの報告です。ただ、修正版が、まだ通常の更新に出ていないUbuntuなどでは、「まだ攻撃が確認されていないから、あとでよい」とは、言いにくい状況です。公開しているサーバーは、上の対処を、先に進めてください。
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